TARRAGOオフィシャルアンバサダー・cozy.westの素顔に迫る『The Artist Interview』第2弾!
前回のインタビューでは、cozy.westの幼少期や、カスタムアーティストになった経緯を語ってもらい大きな反響を得たが、今回は、さらに少年時代を深堀し、cozy.westとスニーカーとの出逢い、ヒップホップカルチャーとの関係、カスタムアーティストとしての今後の展望などに迫った。
▼インタビューpart.1はこちら
cozy.west
京都在住のスニーカーカスタムアーティスト。
国家資格の一級塗装技能士という肩書を活かした類を見ないパフォーマンスで、プロとしては25年以上のキャリアを誇り、日本でのスニーカーカスタム界のパイオニア的存在。
傑出した腕前とカリスマ性あるキャラクターでメディアにも多数出演し、著名人からのスニーカーや高級車のカスタム依頼が後を絶たない。
2021年からは、スペイン発のシューケアメーカー・TARRAGOの本国公認アンバサダーに就任し、日本総代理店である株式会社ルボウが全面的にサポート。
スニーカーカスタムには、TARRAGOの塗料『スニーカーペイント』が愛用され、ハイクオリティな作品を生み出し続けている。
AIR JORDANは、ストリートシーンで絶対的な存在
cozy.westのスニーカー好きは周知のとおりだが、最も好きなモデルはNIKE/エアジョーダン。
好きになったきっかけは、少年時代にまで遡る。
「スニーカーを好きになるきっかけがヒップホップなんやけど、小学生の時に映像で観た海外のヒップホップは、やばいヤツがみんなジョーダンを履いていて、めっちゃ憧れた。
海外のアーティストはジョーダンとコラボするし、ストリートシーンでは絶対的な存在。
ヒップホップに目覚めたのは小学校5年生くらい。もともと、オカンがヒップホップに限らず音楽が好きな人やったからな。
映画『天使にラブソング』に出ているウーピー・ゴールドバーグを見た時に、黒人ってカッコイイって。
バブリシャスっていうガムのCMで、Bボーイがブレイクダンスをするのを観たのがきっかけで、こんな格好がしたいって思った。当時、日本にはまだヒップホップ文化が来ていなくて、地元で俺だけがダボダボの恰好していた。
田舎だから周りはみんなヤンキーで、どっちかっていうと“ビー・バップ(※)”とかそういうのが流行っていたけど、俺は最初からヒップホップやったな。
小学校の頃からヤンキーが出来上がるような町で、周りの友達はよう分からん犬がついたジャージとか(笑)、デザイナーズブランドの服に刺繍が入ったトレーナーみたいなものを着とったで。でも俺はヒップホップの方が好きやったな。」
※ビー・バップ・ハイスクール
1983年から2003年まで「週刊ヤングマガジン」で連載された、きうちかずひろ氏による少年漫画。不良高校生の日常風景をリアルに伝える初期の描写が、当時の中高生を中心に受け大ヒットを記録した。(Wikipediaより引用)
ここで生まれるのが素朴な疑問。cozy.westが生まれ育ったような町からは、なぜラッパーなどのヒップホップカルチャーが誕生するのだろうか?
「俺の町はもともとロックの町だったらしくて。今までは、アメリカといったらロックっていうイメージがあったと思うねんけど、俺らの年代からは雑誌でヒップホップがどんどん出てきた年代でもあったし、そういうのが影響したんちゃうかな。
1990年代から2000年代って、日本が経済的にも良かった時代やったと思うねんけど、そういう時、田舎の隔離された町って何もないねん。情報もないねん、マジで。
その時代ってインターネットもないし、ほんまに何にもないねん。町も栄えてないから遊ぶ場所もない。そういう環境だったから、そこで何が出来るかって言ったらスケボーとか、ラップとか、グラフィティとか。俺はストリートサッカーだった。俺が完全にヤンキーにならへんかったのは、サッカーしていたっていうのがある。
その当時は、今みたいに猫も杓子もラップ歌っとったら良いっていう時代でもないやん。
オカンが「あの子お経読んどるで、ブツブツ言うてるけど大丈夫か?」って言う時代やん(笑)。
ラップではエミネムが好きなんやけど、白人が黒人の世界に入っていった感じが好き。
昔はローリン・ヒルとかフージーズがめっちゃ好きやったな。R&Bとかソウルもめっちゃ聴く。
昔、ストリートではドレッドは女がするもんみたいな感じやってん。男でドレッドするヤツはほとんどおらんかったけど、ローリン・ヒルとか、好きなサッカー選手がドレッドやったから、俺は迷わずドレッドにしてたけどな。
今は最近までツイストやったけど、評判が悪すぎてパーマを緩くした(笑)。」
“ヒップホップ≒スニーカー” 絶対に切っても切れない文化
「ストリートシーンでスニーカーは絶対切っても切れへんくて、ヒップホップは貧しくて治安の悪い地域から生まれた文化やねん。
キャップにしても、スニーカーにしても、『新品のイケてるヤツが買えるんじゃ、俺らは』っていうそういう文化やから。
だから、NEW ERAのキャップのステッカーを剥がさへんのも、『ちゃんと新品で買ったヤツやで』っていう証明やねん。スニーカーでもタグを付けたまま、あえて履くっていう。
“ピカピカのエアフォース”ってよく言うやん。“毎日磨くスニーカーとスキル”っていうリリックをツイギー(※1)っていうラッパーが歌っててんけど、それくらいスニーカーはピカピカっていう文化やねん。
海外ではスニーカーで殺人事件(※2)も起こるし、俺らの中ではそれくらいの感覚かな。」
※1 TwiGy(ツイギー)
愛知県出身のヒップホップMC。18歳の頃、スティーヴィー・ワンダーの日本ツアーに参加し話題となる。1998年に発売された1stアルバム『AL-KHADIR』は、自身の信仰するイスラム教の教義に影響された歌詞と浮遊感のあるトラックが特徴的な作品。(Wikipediaより引用)
※2 高価なスニーカーや、プレミア価値のついているスニーカーを巡り、“Sneaker Violence(スニーカーバイオレンス)”と呼ばれる暴力事件が多発し、社会問題にもなっている。
冠婚葬祭以外、ほぼ毎日スニーカーを履いているというcozy.west。
「結婚式でも、私服でええでって言われたらスニーカーで行く」と話すが、一体何足ほど所持しているのかが気になるところ。
「今はだいぶ減って100足もないと思う。一時はやばくて、何足あるのかも分からへんくらいだった。山盛りあったな。毎週5足買ってた時期もあったもん。
NIKEのブーム全盛期は良いものばっかり出してくるから、買わなアカンって思っていた時もあった。日本人特有の限定品が好きっていう感じじゃなくて、やばい靴は買う。プレミアは絶対押さえていた。
一時は、1足でロレックスが買えるくらいの靴も買ったことあるし、欲しいと思ったら何十万でもすぐに買う。
ほんで高い靴でも普通に履く。履いてスケボーもやるし、バスケもやる。俺はそういうのがカッコイイと思っているから。
大量のスニーカーは、部屋のそのへんに適当に置いている。コレクションがない。俺は一向に執着することがなくて。
1足1足にストーリーが追加されていくから思い入れはあんねんけど、スニーカーへの拘りや知識をひけらかすことがない。
これ言うたら怒られるかもしれへんけど、スニーカー好きってスニーカーの知識を押し付けよるねん(笑)。
でも、俺はスニーカーは好きやけど、ファッションの一部やと思っているから、なんぼええ靴履いてようが、なんぼ安物履いてようが、そいつにハマっていて、そいつがかっこ良かったらええと思っているから。」
興味がない人から見たら0円、それがカスタム
「あんまり執着がないから、処分したり、人にあげたり。カスタムしたヤツも昔は友達にあげた。だから、俺の周りはみんな俺の靴を履いてる。
そのへんに置いてあっても潰れてしまうから、要らんかったら人にあげる。売るという概念はない。
外国人からも『欲しい』ってガンガンDMが来るけど、英語分からへんから断ってんねん。
俺の作品は他が真似するくらいのデザインやから、それなりの価値はあると思う。
俺は本業が塗装屋でカスタムに携わっているから、材料の価値とか基準も全部知っているから値段が出せるやん?
海外のカスタムの基準で見ても、こだわった作品に関しては“帯”はいくと思う。
でも興味がない人から見たら0円。それがカスタムなんやと思う。」
自分の子供達も、Nike Air Force 1がファーストシューズ
「メーカーはNIKEが一番好き。Adidasも持ってんで、カニエ・ウエストの“イージー”とか。俺、Kanye Westが好きやからcozy.westやねん。
自分で稼いだお金で初めて買ったのは、エアフォースの水色のジュエルスウッシュのヤツ。
中学の時に、なぜかみんなええ靴履いてたけど、うちは親が興味なくて買ってもらえへんかったから、初めてバイトして買ったのがそれやったな。そこからは、憧れをひとつずつ潰していって、友達が履いていた靴は全部買った。
自分の子供にも、山盛りスニーカーは買ってきたな。今は年頃やから欲しがらへんけど、ファーストシューズもエアフォース。履かせたくて産まれる前に買った。それは今も大事に残している。」
「スニーカー以外にも金はめっちゃ使う。たぶん、俺の金遣い見たらビックリするで。
例えば、今メダカにハマってんねんけど、普通の水槽じゃ我慢できひんから、ワンセット買って20万とか。
普通の人って、Louis Vuittonの〇〇とかCHANELの△△が欲しいっていう買い方すると思うねんけど、そういうのはない。ブランド関係なしに、自分が欲しいと思ったらバンって買う。ほんまにビックリするで、俺の毎月の支払い。
でも、それが塗装の力やし、今は見渡しても全然儲かってへん塗装屋さんが多いねんけど、俺はカスタムスニーカーアーティストっていう傍らで塗装が本業やから。
色塗ることが本業で、これだけ稼げているっていうのは見ている人も夢があるし、好きなことを頑張っていたらそういう風になれるんやって思ってもらえると思うねん。」
cozy.westの手掛けたコラボレーション作品
渡嘉敷 来夢 さん(バスケットボール選手) post:2022/2/23
山内 健司 さん/かまいたち(お笑い芸人) post:2022/5/1
PUSHIM さん(歌手) post:2022/7/4
孫GONG さん(ラッパー) post:2022/8/1
DJ脇 さん/Repezen Foxx(YouTuber/アーティスト) post:2022/11/1
これまでにカスタムした著名人は錚々たる顔ぶれ。すべて本人から依頼が届き、作品が仕上がる最後までマンツーマンでやり取りをする。
今後、コラボしてみたい著名人はいるのだろうか?
「おらん。依頼が来たら基本的に受けたくないことはないねんけど、作りたいっていう気持ちはない。だってしんどいもん。
だけど、相手が求めてくれて、その人に魅力があったらお返しをしたいって思うし、『cozyに作ってほしい』って言われたら嬉しいし、良い気持ちにさせてもらえたことを俺が何で返せるかって言ったら靴を作るしかできひんやん。その気持ちだけでやっている。
俺は気持ちの表現の仕方が、色を塗ることしかないから。
俺は誰にでも作るわけではない。1個1個の作品に想いを込めているから、履く人間も知っておきたいし、納得したうえで作りたいというのがある。だから自分から積極的に商売はせえへん。
依頼があっても、相手がルーズだったり、態度が悪かったら断る。挨拶ができへんとか、この日に連絡するって言うたのに連絡がないとかはアカン。
俺は自分の作品の価値を下げたくない。俺がテーマを作ったものを大勢の人間で作って、バンバン売りさばくっていうのも良いとは思うねんけど、俺が今カスタムスニーカーをやっているのは、“塗装は素晴らしい”、“日本の職人は素晴らしい”ということを伝えたいからやねん。
日本のカスタムシーンってイケてないのが多くて。この前作ったヤツは、俺が1からデザインを考えたわけではなくて、アメリカで流行っていてイケてるって思ったものを伝えたかったから作った。
アメリカは日本と違って物価も高い。アメリカで10万で売られている物を、俺なら5~6万に抑えて作ってあげることもできるし、それをそのまま作るんじゃなくて、それに俺のオリジナリティを足して作ることもできる。
最近は、TARRAGOのスニーカーペイントを使って派手派手なヤツをバンバン作っているわけじゃないから地味だと思われているかもしれんけど、日本のカスタムシーンを盛り上げるためには大事なことやと思ってる。」
1足1足の作品に精魂を込めるcozy.west。
彼の作品を手にした人達もまた、そのスニーカーと様々なストーリーを作っているようで…。
「好きなように履いてくれたらいいけどな。でも、この前の展示会でみんなの作品を一旦戻してもらったけど、それ見て「履きすぎじゃ!」って思ったのは事実(笑)。
みんなめっちゃ履いてくれているから嬉しい反面、シワとか寄りまくってるからそのまま展示するのはできひんかったから、『ありがとう』の気持ちでリペアしてから返したんやけど、ああいうのを見てしまうと履きすぎって思う。けど、履いてくれるのは嬉しいな。
カスタムしたスニーカーはシューキーパーとか入れた方がええで。ルボウさんに、スニーカー用のシューキーパーを頑張って作ってもらって(笑)。」
ヒップホップに目覚めた少年時代を経て、スニーカーに新たな命を吹き込むカスタムアーティストとなったcozy.west。
今後も“カスタムの素晴らしさ”を声をあげて拡げていってほしい。
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